2014年04月23日

ジミすぎる あまりにも あまりにも  しかし  「ネブラスカ」




    「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」
    というアメリカ映画を見た。

    
    モノクロで、
    出てくる俳優たちも、ジミ!
    話そのものも、超ジミ!
    1950年代の作品のリバイバルだと言われれば、
    素直に信じてしまいそうなほど、全体がジミ!

    
    監督は、アレクサンダー・ペイン
    

    出演者は、
    ブルース・ダーン
    ウィル・フォーテ(英語版)
    ジューン・スキッブ
    ステイシー・キーチ
    ボブ・オデンカーク(英語版)
    

    ね!?
    ジミです。
    

    最初に脚本を読んだときから、
    監督のアレクサンダー・ペインは、
    高齢の父親ウディ・グラント役に、
    ブルース・ダーンを考えていた。

    
    しかし、配給を担当するパラマウント映画側が、
    ジーン・ハックマン、
    ロバート・デ・ニーロ、
    ロバート・デュヴァル、
    ジャック・ニコルソン、
    ロバート・フォスターといった大物スターを望んでいたため、
    ほかの候補を探すために、
    ペインは50人以上の俳優と会ったのだが、
    やはり、ブルース・ダーンが最適という考えは、
    変わらなかった。

    
    
    インチキなDMを信じ込み、
    当たってもいない賞金を手に入れるために、
    父子がモンタナ州からネブラスカ州を目指す。
    その道中に立ち寄った父の故郷で、
    昔の共同経営者だった父の友人や親戚、知人たちと出会い、
    息子は、両親の隠された実像を知る。
    ようするに2人とも、
    けっこうダラシナイ人間だった・・・というジミな話。
    

    とはいえ、
    認知症とアルツハイマーを患っているらしい父親の言動は、
    奇妙キテレツそのもので、
    人間の老後の残酷な姿を、
    観客に突きつけてくる。

    
    その意味からすると、
    ミヒャエル・ハネケの「愛、アムール」とともに、
    高齢社会の戦慄すべき現実が、
    ものの見事に映像化されている、
    というべきだろう。

    
    そして、この作品は、
    第66回カンヌ国際映画祭の、
    コンペティション部門でパルム・ドールを争い、
    ブルース・ダーンが男優賞を獲得した。
    

    また、米国アカデミー賞では、
    作品賞、監督賞、主演男優賞、
    助演女優賞、脚本賞、撮影賞にノミネートされた。
    

    このほかにも、
    全米映画俳優組合賞、
    ゴールデングローブ賞、
    全米映画批評家協会賞、
    ハンブルグ国際映画祭、
    ニューヨーク映画祭、
    ボストン映画批評家協会賞、
    デトロイト映画批評家協会賞、
    サンフランシスコ映画批評家協会賞、
    セントルイス映画批評家協会賞、
    ダブリン映画批評家協会賞、
    トロント映画批評家協会賞、
    バンクーバー映画批評家協会賞、
    アイオワ映画批評家協会賞、
    ノースカロライナ映画批評家協会賞、
    などで、ノミネートされたり、
    受賞したりしている。
    

    監督のアレクサンダー・ペインは、
    1961年、ネブラスカ州オマハ生まれ。
    カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の映画科で、
    修士号を取得し、
    卒業作品「The Passion of Martin 」が、
    サンダンス映画祭で上映され、早くから注目された。
 
   
    その後、1996年、
    「Citizen Ruth」で長編映画監督デビューを果たし、
    ミュンヘン映画祭最優秀賞を受賞する。
    続くリース・ウィザースプーン主演の
    「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」では、
    全米脚本家組合賞、
    ニューヨーク映画批評家協会賞の最優秀脚本賞を受賞。
    アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、
    期待の新進監督としてその名を知られるようになる。
    

    名優ジャック・ニコルソンを主演に迎えた
    「アバウト・シュミット」は、
    カンヌ国際映画祭のコンペティションでプレミア上映され、
    ゴールデン・グローブ賞脚本賞を受賞し、
    監督賞にもノミネートされる。
    全米で大ヒットした「サイドウェイ」では、
    アカデミー賞作品賞と監督賞を含む主要5部門にノミネートされ、
    脚色賞に輝いた。
    また、ジョージ・クルーニー主演の「ファミリー・ツリー」も、
    同賞主要5部門にノミネート、
    同じく脚色賞を受賞する。

    
    このように、ど派手な受賞歴前科者なのに、
    日本ては、なんともジミな存在なのです。
    

    不思議!!!!!
    

    この「ネブラスカ」は、
    人間がトシを取るとどうなっていくかを、
    したたかに映像化したもので、
    70歳を超えて生きてしまいそうな予感がする人は、
    全員見ておくべきでしょう。

    
    ぼくは、もともと薄命タイプ、
    夭折タイプといわれているけれど、
    そんな根拠のないお世辞に迷わされることなく、
    なんとしても、早く死ななくてはと、
    肝に命じた次第です。

    
    
    
    

  

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2014年04月22日

ショーン・ペンは 夢見る統合失調症か  「きっとここが帰る場所」



 
    「きっとここが帰る場所」・・・・・
    This Must Be the Place

    
    この映画は、
    2011年のイタリア・フランス・アイルランド合作。

    
    2008年の第61回カンヌ国際映画祭で、
    「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」が審査員賞を受賞し、
    それを監督したパオロ・ソレンティーノが、
    同映画祭の審査委員長を務めた俳優ショーン・ペンと意気投合して、
    のちに制作されたたのが、この「きっとここが帰る場所」である。
    

    じつにじつに不思議な映画なのだが、
    こういう物語。

    
    
    かつての人気ロックスターであるシャイアンは、
    アイルランドのダブリンにある豪邸で、
    妻と半隠遁生活を送っている。
    今でも現役当時の派手な女装メイクとファッションをしている
が、
    付き合いがあるのは、
    近所のロック少女メアリーなどごくわずかである。

    
    さて、ある日のこと。
    故郷のアメリカから、
    30年以上も会っていない父親が危篤だ・・・
    との連絡が来る。

    
    飛行機が苦手なシャイアンは船で向かったため、
    結局、臨終には間に合わなかった。
    

    葬儀の後、
    ホロコーストを生き延びた父が、
    自分を辱めたナチスのSS隊員アロイス・ランゲを、
    執拗に探し続けていたことを知ったシャイアンは、
    父に代わってランゲを探す旅に出る。

    
    ランゲの妻ドロシーや孫娘のレイチェル、
    その息子のトミーなどに目的を隠して会い、
    ようやく見つけた隠れ家は、
    すでにもぬけの殻になっていた。

    
    そこに、
    ナチスの残党狩りのプロであるミドラーが現れる。
    じつはシャイアンが渡していた資料をもとに、
    ミドラーは既にランゲの行方を突き止めていたのだ。
    

    ミドラーに案内されたランゲの隠れ家で、
    シャイアンは、
    ランゲから当時どのような辱めを、
    父にしたのかを聞かされる。

    
    それは、
    けしかけた犬に脅えて、
    小便を漏らしたのを笑うというものであった。

    
    シャイアンは父の「復讐」として、
    ランゲを全裸にして雪景色の屋外に放り出す。
    

    旅を通じて父親へのわだかまりを解いたシャイアンは、
    飛行機に乗り帰国。
    派手なメイクとファッションをやめ、
    素のままの「大人」の姿で、
    ダブリンの街に帰って来た。

    
    
    ・・・・・・・?
    こう紹介すると、
    なにかとても不思議なドラマのような印象になるが、
    事実、
    美しい悪夢のような画面が連続し、
    あたかも狐につつままれたかのように、
    奇妙にドラマが展開されていく。
    

    じつは・・・・もしも、
    パオロ・ソレンティーノも、
    ショーン・ペンも、
    統合失調症だと知れば、
    すべてが納得できてしまいそうな、
    そんなお話。

    
    
    とにかく一見の価値はあります。
    不思議大好き、正常良い子キムでした。
    
    

    映画を見終わって、
    どこかに帰る場所があるということは、
    たとえそれが、どこであるにせよ、
    とても素晴らしいことを、
    実感しました。



    
    
    
    

  

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2014年04月21日

フランス人不在の フランス製やくざ映画  「預言者」






    2014年の夕張でグランプリをとった「さまよう小指」を見て、
    そのド下手な表現技術と、
    あきれるようなセンスの悪さに、
    監督ではなく、
    審査委員長の根岸なんとかを殺してやりたくなったボクは、
    お口直しを必要としていた。

    
    だってさあ、
    やっぱり映画の未来に、なにがしかの希望をもちたいもん。
    

    そこで選んだのが、
    初見参! ジャック・オーディアール監督の「予言者」!

    
    カンヌ国際映画祭で、
    審査員特別グランプリを受賞していたので、
    つい期待してしまったのが、
    悲しくもスケベな罪と罰ではありました。

    
    
    チンピラだったアラブ系の青年が、
    あれこれ苦労して立派なヤクザ者に成長していくお話。

    
    フランスのセザール賞でも、
    作品賞・監督賞をとっいるけれど、
    それとともに、
    アラブ系の青年を演じたタハール・ラヒムが、
    主演男優賞をとっていて、
    野性味のあるイケメンを、
    じつに魅力的に演じていた。

    
    そういえば、この映画、
    フランスとスペインの資本で作られているのに、
    登場するのは、
    アラブ系とイタリア・マフィア系ばかり。

    
    たとえば、
    韓国人と中国人しか出てこない映画を、
    日本で作れると思いますか?
    ただ、フランス人のヤクザでは、
    青白いフニャチンばかりになって、
    魅力全減必至だろうなあ。

    
    
    とにかく語りはうまいし、
    話も起伏に飛んでいて退屈はしないのだけれど、
    見方によっては、ヤクザ礼賛にもなりかねない。

    
    
    ただ、日本の配給会社は、
    「スプリングハズカム」というところ。
    しゃれた会社名だ。
    フランス語にすると、
    「プランタンエタリベ」かな?

    
    いちおう、ストーリーだけ記録しておきましょう。
    

    19歳のアラブ系青年マリク(タハール・ラヒム)は、
    6年の刑を宣告され、中央刑務所に送られて来る。
    そこは人種間の対立が激しく、
    互いに牽制し合いながらも、
    最大勢力であるコルシカ・マフィアのグループが、
    実質的に支配している世界だった。
    身寄りのないマリクは、
    コルシカ系グループを仕切るセザールに目をつけられ、
    彼らのグループの人間を売ったアラブ系の男レイェブを
    殺すように脅迫される。
    逡巡しながらもマリクは、
    刑務所内で生き延びるために初めての殺人を犯す。
    これをきっかけにセザールの子分となり、
    読み書きとともに生き残るための術を学んで行く。
    そして、マリクはレイェブの幻と暮らすようになり、
    レイェブが語る予言めいた言葉を聞くことになる。
    (以下省略)
    


    
    
    
    
  

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2014年04月14日

映画の未来を暗くする絶望的な  「さまよう小指」





 
    あの「ゆうばり映画祭2014」は<
    観客動員数が、前年を大幅に超えたという。

    
    壮挙とはいえないまでも、
    いいことだ。

    
    なにせ極寒の2月に、
    夕張まで出かけていくのは、
    勇気ともの好きだけで済むことではない。

    
    ただし、近隣の退屈している住民にとっては、
    かっこうのヒマ潰しになるのかもしれない。

    
    んで。

    
    2014年の最高賞、グランプリに輝いたのは、
    「さまよう小指」という、
    31歳の女性監督竹葉リサが、
    たったの6日間で撮影した作品だった。

    
    もちろん、現地で見たわけではない。
    スカパーで放映されたものを録画して、
    それを見たのです。

    
    んで、その結果は?
    むぐむぐむぐ。
    できることなら、なにも語らずに冬眠したい。
    もうね春は来てしまってるみたいけど、
    それでも、断固、冬眠したくなった。

    
    
    竹葉監督は、東京在住の31歳。
    約5年前からゆうばり映画祭に遊びに来ていて、
    そこで培った人脈を元に映画製作をスタートさせたという。

    
    ここ数年は短編作品を出品していたが、
    初めての長編作品でグランプリを獲得。
    物語は、
    思いを寄せる男性の小指からクローン人間を作る少女の姿を
    描く奇想天外なストーリー。

    
    グランプリ発表で、
    審査委員長の根岸吉太郎監督が、
    「さまよう小指」の受賞を告げると、
    竹葉監督は「絶対に獲れないと思っていたので嬉しい! 震える!!」
    と絶叫。
    壇上を飛び跳ねて受賞を喜んだ・・・のだそうです。

    
    そして根岸監督は、
    「なんと言っても小指からクローンというのがユニーク。
    どう育っていくのか。竹葉ワールドの次が見たい。」
    根岸監督は、よほど若い女に飢えていたのか、
    政治家にも負けないテイタラク、低タラク。

    
    コンペ作品のおよそ半分が、
    オヤジ殺しや3Pを描いてるというのは、
    けっして侮蔑すべきことではないけれど、
    (3Pだって大好きだけれど)
    ぼくは、この「さまよう小指」を見て、
    映画の未来に深く絶望したことだけは確か、
    です。


    
    
    ★ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 受賞一覧
    
    <オフシアター・コンペティション部門>
    ■グランプリ:「さまよう小指」(竹葉リサ監督)
    ■審査員特別賞:「女体銃 ガン・ウーマン」(光武蔵人監督)
    ■北海道知事賞:「リュウグウノツカイ」(ウチダアツシ監督)
    ■シネガー・アワード:「さまよう小指」(竹葉リサ監督)
    ■スカパー!映画チャンネル賞:「死ななくて」(ファン・チョルミ
    ン監督)
    
    <インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門>
    ■グランプリ:「JUNK HEAD 1」(堀貴秀監督)
    ■優秀芸術賞
    「イナーシャル・ラブ-隋性の愛-」(セザール・エステバン・アレ
    ンダ&ジョゼ・エステバン・アレンダ監督)
    「サイクロイド」(黒木智輝監督)
    「肛門的重苦 Ketsujiru Juke」(冠木佐和子監督)
    ■審査員特別賞:「貧血」(加藤麻矢監督)
    
    
    
    
  

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2014年04月13日

「マンク」ではなくて 「マン☆」のほうが似合う映画がある





 
    フランス/スペインの合作映画、
    「マンク 破戒僧」を、
    録画DVDで、見た。

    
    その内容からしても、
    「マンク」の「ク」は、
    マジめな話、
    「コ」のほうが相応しいのではないかと、思った。

    
    2011年、フランス・スペインの合作、
    上映時間は、101分。
    監督は、ドミニク・モル。
    配給は、アルシネテラン。

    
    発表当時、激しい非難を浴びながらも、
    サド、ホフマン、ブルトンらの賛辞によって、
    一世を風靡した異才マチュー・G・ルイスによる
    18世紀のゴシック小説「マンク」の映画化。

    
    これが、日本では、
    国書刊行会から発刊されている・・・
    ときけば、
    「ああ、ああ、ああ。なるほど」
    の線上に位置づけられる作品であろう。

    
    
    悪魔の誘惑に身をゆだねた破戒僧の、
    禁欲と情欲の相克がもたらした戦慄の運命を描いたもの。
    

    17世紀スペイン・マドリッド。赤子の時にカプチン派の修道院の門前
    に捨てられ、僧に育てられたアンブロシオ(ヴァンサン・カッセル)
    は、その熱心さから町中の人が彼の雄弁な説教を聞きにやって来るほ
    どの僧に成長していた。

    
    すべての欲を絶ち、規律を重んじるアンブロシオであったが、出生の
    謎とたまに彼を襲う頭痛に悩まされていた。ある日、傷ついた顔を覆
    うために仮面をかぶっているという、ミステリアスな見習い修道士バ
    レリオ(デボラ・フランソワ)がやってくる。

    
    彼は、アンブロシオの頭痛を和らげる不思議な力をもっていた。しか
    しじつは、バレリオは彼に近づくために女性であることを隠している
    偽りの修道士だったのだ。

    
    やがてアンブロシオは、バレリオとの肉欲に溺れ、強姦、窃盗、殺人
    とあらゆる悪徳に身を沈めていくのだった……。
    

    
    あはははは。
    ヨーロッパの人たちって、こういう話が好きなんだよね。
    と言うのは、偏見であって、正しくは、
    「人間さんって、こういう話が好きなんだよね」

    
    だから、君も、
    みずからが人知れず隠しもつ性癖を、
    なんら恥ることはありません。

    
    杉本苑子の小説「華の碑文 世阿弥元清」には、
    美少年だった元清が、
    奈良の僧院に稚児として仕え、
    僧兵の色欲の犠牲になり、
    精も根も尽き果てて帰宅してくるというエピソードが、
    登場する。

    
    ようするに、こうした世界では、
    男も女もないのかもしれない。

    
    
    それにしても。
    「マンク 破戒僧」の原作者は、男性。
    世阿弥の秘められた性体験を描いたのは、女性。
    

    男は、男の異性愛については能弁だが、
    同性愛については、なぜか寡黙である。


    
    
    
    
  

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2014年04月08日

「オン・ザ・ロード」   おお わが青春のレクイエムよ




 
    自由を夢見て 終わらない旅へ。
    自由を夢見て 終わらない旅へ。
    自由を夢見て 終わらない旅へ。
    自由を夢見て 終わらない旅へ。

    
    なんだよ、いまごろ!
    俺のキャッチフレーズを、無断で横取りしやがって、さ。
    

    
    まっ、待てよ。すこし違うかもしんない。
    
    夢見た自由は棄てたけど、
    まだ終わらない旅の続きがある!
    

    けっけっけ、ケルアック!
    けっけっけ、アレン・ギンズバーグ!
    けっけっけ、ウィリアム・バローズ!

    
    
    ジャック・ケルアックが、3週間で書き上げて、
    ボブ・ディランやジム・モリソンに深い影響を与えたという小説、
    「ON THE ROAD」!

    
    しかし、
    ディランやジム・モリソンをあげた以上、
    もうひとり、リストに加えるべき男がいる。
    そう、kimpitt!

    
    kimpitt!は、自称日本人で、
    イエロー・ヤンキーではあるけれど、
    彼もいまだに、
    自由を夢見て 終わらない旅をしたがっている。

    
    
    「僕にとって、かけがえのない人間とは、
    なにより狂ったやつら、
    狂ったように生き、喋り、
    すべてを欲しがるやつら。
    ありふれたことは、言わない。
    燃えて、燃えて、燃え尽きる、
    夜を彩る花火のように・・・・・」

    
    
    ウォルター・サレス監督作品「オン・ザ・ロード」を、
    見た。

    
    うーん。
    なにはともあれ、
    せつなかった。

    
    
    じつは、今年の秋、それも初秋の9月に、
    ぼくたちの絵画グループは、作品展をやる。
    そして、そのタイトルが、
    「ON THE ROAD」
    なんだよ。

    
    無軌道で、それゆえに楽しくみえるけれど、
    こんなに哀しく切ない青春映画は、ほかにはないよなあ。
    

    
     信頼できるかどうかは不明な筋からの情報によると、1957年、ジャ
    ック・ケルアックは俳優のマーロン・ブランドに手紙を送り、ブラン
    ドがディーン・モリアーティ、ケルアック自身がサル・パラダイスを
    演じることを提案した。
     しかし、ブランドはその手紙に反応を示さず、その後ワーナー・ブ
    ラザーズが11万ドルで映画化権を手に入れようとしたが、ケルアック
    の代理人のスターリング・ロードが断った。

    
     ついで、1979年にフランシス・フォード・コッポラが権利を獲得。
    やがて時を経て、1995年、製作者たちは16mmフィルムで白黒撮影する
    ことを計画し、詩人のアレン・ギンズバーグとともにオーディション
    を開催したが、プロジェクトは失敗に終わる。

    
     その数年後、彼らは、イーサン・ホークとブラッド・ピットにサル
    ・パラダイスとディーン・モリアーティを演じさせようとしたが、こ
    れも失敗に終わる。
    

     そして2001年、コッポラは小説家のラッセル・バンクス(英語版)
    を雇って脚本を書かせ、ジョエル・シュマッカー監督、ビリー・クラ
    ダップをサル・パラダイス役、コリン・ファレルをディーン・モリア
    ーティ役で製作しようとしたが、最終的にこれも見送られた。
    

    
     このように、この「オン・ザ・ロード」には、悲劇の歴史が繰り返
    されてきたのだが、それにしても・・・・

    
     マーロン・ブランド、イーサン・ホーク、ブラッド・ピット、コリ
    ン・ファレルなどという候補スターには、なぜ納得させれらる・・・
    てか、いかにもいかにも彼らは、「オン・サ・ロード」的なスターと
    いえる・
     とくに、コリン・ファレル! もし、ぼくがブロデューサーか監督
    だったら、ディーン・モリアーティ役は、彼を於いてほかにはないと
    思っただろう。
     もちろん、あくまで初期のコリン・ファレルではあるけれど。

    
    
     とにかくいまは、この作品について、多くを語りたくしない。 サ
    ウンド・トラックのCDも買ったので、静かにそれを聴きながら、ぼ
    の青春をレクイエムしたい。

    
     以下は、そのCDに収録されている曲たち。最後に、ケルアック自
    身による朗読がついているのも、泣かせるね。
    

    
    スウィート・シックスティーン
    ロマン・キャンドルズ
    イップ・ロック・ハラシー
    レミニセンス
    ミーン・アンド・エヴィル・ブルース
    ラヴィン・イット
    オープン・ロード
    月夜の小舟
    コ・コ
    メモリーズ ̄アップ・トゥ・スピード
    アイヴ・ガット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリング
    ザッツ・イット
    キープ・イット・ローリン
    ソルト・ピーナッツ
    ヒット・ザット・ジャイヴ・ジャック
    ゴッド・イズ・プー・ベア
    デス・レター・ブルース
    アイ・シンク・オブ・ディーン
    ジャック・ケルアックによる「オン・ザ・ロード」の朗読
    
    
    
    
  

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2014年04月01日

モシカシテ  秀作 じゃないの 「白ゆき姫殺人事件」




 
    4月上旬のラジオで紹介する作品を、
    ぼくたちは探していた。
    その、ぼくたちとは、
    番組担当のディレクター(若い女の子Sさん)と、
    ぼくのことである。
    

    ○○○○○・・・・は、
    主演の男性スターの顔が嫌いだし、
    ○○○○○・・・・は、
    放送日前後には、
    もう上映が終了している可能性が低くないし・・・
    ・・・ぶつぶつぶつ。

    
    「だから。これで、いこうか、これで。
    3月29日封切りだから、これなら大丈夫!」
    「うん。ほかにはないし、ね。
    「よし、決めた。これで、いこう」
    「こんな事情がなければ、
    絶対に見ることはない作品かもれないけれど」
    「ま、それも、ひとつの運命だ。
    ぼくたちにとっても、映画にとっても」

    
    
    ということで、選ばれた名誉なき作品は、
    「し○○○○○さ○○○○○ん」
    でありました。
    苦笑。
    

    
    と、と、と、ところが、
    見てみると。
    

    「なに? これ? アテウマなんかじゃ、ないじゃん。
    ちょっと、ちょっと、ちょっと。
    これって、けっこう秀作してるじゃん」

    
    
    湊かなえ原作、中村義洋監督作品、
    「白ゆき姫殺人事件」
    

    化粧品メーカーに勤務する25歳のイケジョ(美貌の女子社員)が、
    緑したたる公園の林のなかで、
    全身十数か所を刃物でズタズタに刺されたうえ(着衣のまま)、
    石油をかけて焼かれ、謎の死を遂げた・・・・・・。

    
    まるでテレビのワイドシヨーの要請に応じて、
    発生したような事件・・・である?
    

    
    ぞろぞろと登場する女性社員は、
    みんなイマドキのケバさを、ほどよく身にまとっているし、
    上司との恋愛で、三角関係にある女子社員同士とか、
    番組制作会社の、冴えない契約社員の映像ディレクターとか、
    そんな人間たちが、この殺人事件について、
    ツィッターで、無責任な、
    推理ともいえないつぶやきを連発して、
    犯人探しが始まる。

    
    こんな人間風景を大型スクリーンで見ていると、
    いまの日本人は、そして、いまの日本そのものは、
    いかにも軽薄で、薄っぺらな存在であることが、
    イヤでも、びしびしと伝わってきてしまう。
    

    おまけに、
    この映画そのもののストーリーテリングの作法も、
    じつに巧みに構成されていて、
    観客の好奇心に火をつけるような語り口が、
    絶妙に、あざとかったりする。

    
    つまり、映画そのものも、
    まさに時代の軽薄さを背負い込んで、
    計算ずくではしゃいでいるかのようである。
    

    
    うーむ。
    こりゃ、タダモンの映画ではない。
    時代の空虚さ、生き物の愚かさ、生きることの虚しさを、
    高い目線で批判するのではなく、
    同じ地平から、同じ痴情に染まって、
    確信犯的に告発しているのではないか。

    
    とにかく、
    中村義洋監督の表現技法は冴えまくっていて、
    なにより岩波式インテリの対極の立ち位置から、
    日本と日本人を告発しようとしているところが、
    素晴らしい。

    
    また、
    あわや犯人にされかかる地味な社員役の井上真央の、
    微妙なニュアンスの表情の演技が絶品だし、
    登場するだけで疲れ切った男になっている綾野 剛も、
    演技というよりキャラの持ち味で不戦勝しちゃってるし、
    その他の俳優たちも、
    政治家同様に、みんなみんな薄っぺらでアホ!・・・・
    虚しい人生以外になにももたない現代人を、
    見事に演じている。

    
    これって、もしかしたら、
    演技なんかじゃなくて、
    出演俳優たちの実像そのものなんじゃないのか?
    

    
    世の中の薄っぺらさを、
    こんなにもリアルに描き出した映画は、
    そうそう、ざらにあるものではない。

    
    これは、異色の秀作ですよ。
    まいったなあ、もう。

    
    
    
  

Posted by kimpitt at 20:41Comments(0)