2013年06月30日
ワケわかんない それが正解 映画「俺俺」

この映画、全国公開は5月25日だったのに、
いまごろ、
つまり、6月下旬になって、
ようやく静岡へやってきた。
三木 聡(監督)に泣きつかれたのか、
それとも、
予定した新作を配給会社からまわしてもらえなかったのか。
しかし、5月下旬の興行成績は、
全国の65スクリーンで封切りされ、
国内映画で第10位になったそうだから、
まずまずといえる?????
映画「俺俺」は、星野智幸の同名の小説を映画化したもので、
この原作「俺俺」は、
大江健三郎賞をとっていて、
ぼくも書店で手にとってみて、
あわや買いそうになった話題作。
主人公の永野均青年は、
家電量販店に勤める冴えない?青年で、
彼がふとした出来心で「オレオレ詐欺」をしたことから、
本人も知らない「俺」が増殖し、
やがて、無数の永野均が、
他の永野均を「削除」、
つまり殺すようになるというコミックなミステリー。
オフィシャルサイトに書き込まれた感想としては、
「なんだか、よくわかんなーい」が多くて、
つい、笑ってしまった。
だって、それって、
どんびしゃ正解だもん。
もともと三木聡の特徴は、
不条理な映画をつくることにあるという予備知識があれば、
「ワケわかんなくて正解」と自己弁明できるのだけれど、
主演が、KATーTUNの亀梨一也だからという、
きわめて次元の低い動機で見に行った人は、
「ワケわかりたいのに、わからなくて」
ウズウズしたかもしれない。
でもね。
個性なんかないくせに自分探しに取りつかれて、
似た者同士で群れ合っている無能な若者のことを、
痛烈に皮肉っていたりする批判精神は、
むし暑い夏に向かうマトモなオトナたちに、
一服の清涼ドリンクになるだろう。
そう、
CCレモン!?
オレンジーナ?!
三つ矢サイダー!?
カルピスソーダ?!
シュウェップス(ブリティッシュ・レモントニック)!?
それにしても、
脇役陣がメチャ素晴らしい。
加瀬 亮
内田有紀
岩末 了
松尾スズキ
小林きな子
中谷 竜
ふせえり
以下略
とくに、
家電量販店でのシーンが、
コケティッシュにコミックだ。
それと比較すると、
亀梨一也は、へいへいボンボン。
しかし低能な若者には、すごく似合ってて適役?
とにもかくにも、
「ワケわかんなくて正解」の映画、
お勧めです。
★余談
日曜日の田舎のシネコン。
飲み物やスナツクを乗せたトレイ持参の客が多くて、
「おいおい、ここはファミレスかよ」
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19:37
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2013年06月14日
古書店 「壁と卵」 開店

6月1日、静岡市内に、
小さな古書店が誕生した。
しかし、ただそれだけでは、
さほどの話題とはいえないだろう。
ところが、その古書店の名前が、
「壁と卵」
だということになると、
悪い冗談はやめてくれよ・・・
と言いたくなる。
しかし。
その店を開いたのが、
ぼくの知っている人・・・
ということになると、
話は別だ。
ほかの知らない人がそういうことをしたら、
その店へ火炎瓶を投げ込みたくなるのだが、
彼、「K」がやるのであれば、
クヤシイけれど、笑って許すしかない。
さっそく、行きました。
ほんとうに小さな店ですが、
素敵です。
村上春樹の本の一部、
それに、いろいろな写真集。
寺山修司の本、
永山則夫の本。
なんかさあ、
僕を殺すために仕組んだような品揃え。
やっぱし、火炎瓶を投げ込もうかなあ。
アドレス 静岡市葵区駒形通り3丁目1-15
TEL 090-6578-7834
営業時間 10時から20時まで
(いまのところ定休日なし)
店主名 川島拓朗(好青年です)
ぜひ一度、訪問してやってください。
よろしく。
あ、ぼくは、
3冊、買ってきました、とりあえず。
スーザン・ソンタグ「写真論」 晶文社
ウィリアム・S・バロウズ「トルネイド・アレイ」 思潮社
永山則夫「文章学ノート」 朝日新聞社
Posted by kimpitt at
22:30
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2013年06月12日
ホドロフスキーの新作 いよいよ日本公開

★転載ものです
アップリンク配給作品『リアリティのダンス』の
日本公開が決定いたしました。
★公式Twitter:https://twitter.com/danceofreality
★公式Facebook:https://www.facebook.com/TheDanceOfReality.jp
★海外版予告編YOUTUBE:http://youtu.be/-Za7PlknnTw
『エル・トポ』(1969年)、『ホーリー・マウンテン』(1973年)、
『サンタ・サングレ/聖なる血』(1989年)など、世界中に熱狂的な
ファンを持つ、チリの映画作家アレハンドロ・ホドロフスキー。
今年84歳となるホドロフスキー監督の23年ぶりとなる最新作!
今作は、第66回カンヌ国際映画祭の監督週間でワールド・プレミア上映されたばかり。
上映前には、コンペティションに『オンリー・ゴッド・フォーギヴズ』を出品した
彼の大ファンだという、ニコラス・ウィンディング・レフン監督がプレゼンター
として登壇し、ホドロフスキー監督を舞台に招きました。
また今年の監督週間では、彼の未完のSF大作の製作過程を追い、レフン監督や
H・R・ギーガーらが出演するドキュメンタリー『ホドロフスキーのデューン』
(Frank Pavich監督)も上映され(のちにデヴィッド・リンチ監督が
『デューン/砂の惑星』として完成)、話題を集めました。
1990年の『The Rainbow Thief』(日本未公開)以来23年ぶりとなる
『リアリティのダンス』は、ホドロフスキー監督による
自伝『リアリティのダンス』(文遊社刊)が原作。
チリの田舎町を舞台に、権威的な父親、オペラを歌うように話す母親とその息子を
中心とした家族の生活を、シュールレアリスティックなタッチや残酷さも交えながら描写。
鮮やかな色彩と音楽に満ちた、まさにダンサンブルな作品となっています。
監督はカンヌでの取材で、
「おっぱいの大きな女性が出てくればフェリーニ的だと言われるし、
小人が出てくればブニュエル的だ、
フリークスが出てくればトッド・ブラウニング的だと言われるんだろう。
しかし、私は映画史のどの監督にも似ていない。
人々はあとになって『あぁこれぞホドロフスキー』と表現するけれど、
私は成功するしないに関わらず、
いつも新しいものを作り続けているつもりだ」と語っています。
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作品紹介
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映画『リアリティのダンス』
監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:ブロンティス・ホドロフスキー(『エル・トポ』)、
パメラ・フローレス、クリストバル・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキー
音楽:アダン・ホドロフスキー
原作:アレハンドロ・ホドロフスキー『リアリティのダンス』(文遊社)
原題:La Danza de la Realidad(The Dance Of Reality)
2013年/チリ・フランス/スペイン語/130分
配給:アップリンク
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★海外版予告編YOUTUBE:http://youtu.be/-Za7PlknnTw
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21:44
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2013年06月11日
イタリア映画「海と大陸」 人のいのちは 誰が守るのか

「世界の歪みと人間としての良心を描く、
現代イタリアの心揺さぶる感動作」・・・
とチラシに書いてあった。
ま、好意的に短評するなら、
そういう、いや、それに近い作品である。
エマヌエーレ・クリアレーゼ監督作品、
「海と大陸」。
あの、岩波ホールでロードショーと聞けば、
おのずから、作品は想像がつく。
そして、朝日新聞夕刊の批評を担当したのが、
あの佐藤忠男だと知れば、
おのずから、作品の傾向を連想するしかない。
つまり、とても「まっとうな映画」、
ヒューマニスムの香り高い作品、
マジメで地味な仕上がり。
所は、地中海の小さな離島リノーサ。
この島は、アフリカ大陸とシチリア島の真ん中に位置しているため、
難民(不法移民)の船が、
しばしば漂着する所てある。
このリノーサ島で、
漁師の父を海で亡くした20歳のフィリッポは、
祖父と母親の3人暮らしで、
祖父の漁を手伝っているのだが、
ある日、溺れかけた妊婦の難民を助けたことから、
自分たち漁師が抱える深刻な問題に直面する。
漁そのものはジリ貧で、
廃業して他地へ移住しようかと考えている矢先の出来事だ。
作品そのものにヒューマニズムの説教臭はなく、
語られる物語とはうらはらの、
美しい地中海の映像が、胸にしみる。
最終的にフィリッポは、
母親と祖父の反対を無視して、
乳飲み子を抱えたエチオピアからの難民家族を、
深夜のシチリア海峡を越えて大陸まで、
送り届けようとする。
もちろん、難民支援は、
法に触れる行為であることを知りつつ・・・
である。
法を守るか。
人のいのちを守るか。
そりゃ、国家が人のいのちなんぞ、
守ってくれるわけがない。
だとしたら、法を犯しても、
人と人は助け合うべきだ。
この作品「海と大陸」に、
審査員特別賞を贈ったヴェネチアには、
凛とした知性がある。
Posted by kimpitt at
17:59
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2013年06月04日
木下恵介を描いた 「はじまりのみち」 その意味は ここにある

いまから約50年前、
日本映画は、黄金期だった。
その黄金期を支えていたのは、
小津安次郎
黒沢 明
木下 恵介
の3人だったと、言う人もいる。
そして、小津安次郎の代表作であり、
日本映画のオールタイム・ベストテンでは、
いまだに、トップの座にランクされることもある「東京物語」。
今年、これは、「東京家族」という名でリメイクされている。
監督は、山田洋次である。
しかし、小津監督自身を主人公にした作品は、
つくられてはいない。
黒沢 明についても、同じことがいえる。
ところが、今年、
木下恵介を主人公にした「はじまりのみち」
という作品が、制作された。
小津安次郎にも、黒沢 明にも起きなかったことが、
木下恵介には、起きてしまった。
これは、非常に象徴的な出来事だと思う。
木下恵介は、
小津安次郎・黒沢 明と比較して、
国際的な知名度は低いけれど、
日本での大衆的な評価は、
小津・黒沢よりもはるかに高く、
ヒット作も、二人よりは多い。
この3人のなかで、
アクション活劇を手がけたのは黒沢だけで、
高級住宅地に住むハイソな家族を描いたのは、小津だけ。
小津は、静かに聡明に人間を見つめ、
初期の黒沢は、正義感にあふれるヒューマニズの人だった。
そして、木下は・・・・・・
いつも、名もなく力もなく貧しい人間を見つめ、
優しく温かな眼差しで、彼らを包みこんでいった。
多くの無名市民が木下を支持したのは、
彼を、自分たちの味方としてとらえていたからだろう。
映画「はじまりのみち」は、
木下恵介の伝記映画ではなく、
映画監督としての歩みでもない。
若き日に、彼が、
映画監督として頓挫しかけた時期に、
病に倒れた母を献身的に介護するエピソードを、
へんに力を入れることもなく、
さらりと描いた小品である。
木下を演じたのは、加瀬 亮。
監督・原 恵一の指導の良さもあるが、
引き気味の受け身の演技が抜群で、
加瀬 亮なくして、この映画の成功はありえなかった。
顔は、むしろまったく似ていなにもかかわらず、
木下恵介の再来かと思わせるぼど、似ている。
なにが似ているかというと、
「人に対するやさしさと、
ひそかに隠しもっているといいたい精神の強さ」。
加瀬 亮の才能は、
さまざまな監督に評価され、
優れた出演作品が多いけれど、
「炭海市叙景」と「はじまりのみち」は、
究極の代表作として記憶されていい。
木下恵介は、
庶民にもっとも近いところで、
映画をつくり続けた、希有の人て、
この「はじまりのみち」は、
そのことを、したたかに証明した作品。
木下の死後15年目にして実現した、
日本映画界の快挙である。
Posted by kimpitt at
19:58
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