2013年06月11日
イタリア映画「海と大陸」 人のいのちは 誰が守るのか
「世界の歪みと人間としての良心を描く、
現代イタリアの心揺さぶる感動作」・・・
とチラシに書いてあった。
ま、好意的に短評するなら、
そういう、いや、それに近い作品である。
エマヌエーレ・クリアレーゼ監督作品、
「海と大陸」。
あの、岩波ホールでロードショーと聞けば、
おのずから、作品は想像がつく。
そして、朝日新聞夕刊の批評を担当したのが、
あの佐藤忠男だと知れば、
おのずから、作品の傾向を連想するしかない。
つまり、とても「まっとうな映画」、
ヒューマニスムの香り高い作品、
マジメで地味な仕上がり。
所は、地中海の小さな離島リノーサ。
この島は、アフリカ大陸とシチリア島の真ん中に位置しているため、
難民(不法移民)の船が、
しばしば漂着する所てある。
このリノーサ島で、
漁師の父を海で亡くした20歳のフィリッポは、
祖父と母親の3人暮らしで、
祖父の漁を手伝っているのだが、
ある日、溺れかけた妊婦の難民を助けたことから、
自分たち漁師が抱える深刻な問題に直面する。
漁そのものはジリ貧で、
廃業して他地へ移住しようかと考えている矢先の出来事だ。
作品そのものにヒューマニズムの説教臭はなく、
語られる物語とはうらはらの、
美しい地中海の映像が、胸にしみる。
最終的にフィリッポは、
母親と祖父の反対を無視して、
乳飲み子を抱えたエチオピアからの難民家族を、
深夜のシチリア海峡を越えて大陸まで、
送り届けようとする。
もちろん、難民支援は、
法に触れる行為であることを知りつつ・・・
である。
法を守るか。
人のいのちを守るか。
そりゃ、国家が人のいのちなんぞ、
守ってくれるわけがない。
だとしたら、法を犯しても、
人と人は助け合うべきだ。
この作品「海と大陸」に、
審査員特別賞を贈ったヴェネチアには、
凛とした知性がある。
Posted by kimpitt at 17:59│Comments(0)