2013年02月06日
アルベール・カミュ原作 「最初の人間」

「異邦人」「ペスト」などで知られる・・・
フランスのノーベル賞作家・アルベール・カミュの、
かなり自伝的色彩の強い絶筆作品、
「最初の人間」が、2011年に映画化され、
2012年の後半に、岩波ホールで公開された。
それが、静岡へもやってきたのである。
ちなみに、タル・ヴェーラの「ニーチェの馬」も、
まもなく静岡へやってくる。
映画を見るまで、この作品のタイトル「最初の人間」は、
人類最初の人間を意味するのかと思っていたが、
ドラマの途中、
主人公のジャック・コルムリがアルジェで生まれたとき、
彼の父親は、わが子のことを、
「ル・プルミエ・オム」と呼んだので、
ああ、そういうことかと思ったのだが、
解説には、
ジャックにとつては、母親こそが、
「ル・プルミエ・オム」なのだという。
これを見る前日、たまたま同じ映画館で、
日本映画「その夜の侍」を見ていたので、
はからずも、この2作品を対比的に見てしまったのだが、
「その夜の侍」が、
つくりも台詞も最新のセンスでまとめられているとすれば、
この「最初の人間」は、
戦前のフランス映画だといっても、なんら違和感がないほど、
見事に古典的な作風。
ぼくにとっては、
どちらも、めちゃ魅力的に思えた。
そして、
「へんに技巧をこらさず、観客に媚びてはいない」
という点で、
この二つの作品は、酷似していたのである。
いまは、フランスで著名な作家となっているジャック・コルムリは、
貧困のアルジェで育ち、いま、
その町を旅している。
そこには、当然、
支配国フランスと、植民地フルジェリアの問題が、
横たわっている。
ジャック・コルムリは、現地アルジェの大学で、
「作家の義務とは、歴史をつくる側ではなく、
歴史を生きる側に身をおくことです」と、
語る。
村上春樹のスペインでの講演は、
このコルムリ(カミュ)を真似たのだろうか。
ぼくは、スクリーンを見つめながら、
なぜかアントニオ・タブッキを思いだしていた。
「最初の人間」は、
2011年のモントリオールで、国際批評家連盟賞、
おなじくヴェネチアで、外国人記者協会賞を与えられている。
卑俗的な紹介をするなら、これは、
アルベール・カミュの故郷再訪旅行の
心証的な映像化である。
いささかも大衆に媚びることのない孤高の作風が、
じつに魅力で、好きな作品だ。
Posted by kimpitt at 23:25│Comments(0)