2012年11月27日
クリント・イーストウッドだから 特等席があるのか
人生に、特等席はあるのか。
「そんなもの、あるわけない」
という正解のほかにも、
オルタナティブな回答は、ある。
「山あり谷あり河あり崖ありの生活を乗り超えて、
ようやくたどり着いた席。
それは、誰にも平等に用意された特等席だ」
クリント・イーストウッド主演の、
実際は、準主演というか助演に近い役なのだが、
「人生の特等席」は、
日本が勝手につけたご都合主義の、
しかし、いかにももっともらしい名訳・迷訳の題名で、
原題は、「TROUBLE WITH THE CURVE」。
「カーブの災難」という、じつにシャレたもので、
特等席の「と」の字とも、まったく無縁の作品である。
しかし。
ドラマのほうは、ハリウッド独特のご都合主義で、
「そうして、こうして、ああなって、めでたしめでたし」
になっているから、だからこそ安心して鑑賞できて、
他人事であるにもかかわらず、
見終わると、そこはかとなくハッピーな気分になる。
自民党がどれだけ席を獲得しようが、
民主党議員が死にたくなるほど落選しようが、
日本の未来より自分たちの未来だけに関心がある第三極が、
予想通り議席を伸ばしえないままになるとしても、
人民には人民なりの人生の特等席があるわけです。
バンザーイ!
「人生の特等席」で、クリント・イーストウッドは、
老いぼれた、野球のスカウトマンを演じているのだが、
つまづいて転げたり、
車で事故を起こしそうになったり、
惜しげもなく「老いの姿」を、見せてくれる。
これって、「逆の美意識じゃん」と思うと、
ミもフタもなくて、シラケてしまうけれど、
「トシとってもゲンキ」という白々しい見栄よりは、
ずっといい。
人間の老いは、もっともっと描かれていいと思う。
それからこれは、
野球のドラマであるよりも、
シングルファーザー家庭の父と娘の物語でもある。
それも、「わが娘かわいや」の話ではなく、
「父親に棄てられたと思った娘の闘いのドラマ」
になっているところが、ユニーク。
アメリカ映画って、
ドラマのマーケティングに長けていて、
人心世相をじつに巧妙したたかに取り込んだドラマづくりをする。
「TROUBLE WITH THE CURVE」じゃ、
客は入らないかもしれないけれど、
どんな人生にもカーブの災いは付き物だ・・・
というメッセージが含まれているようで、
悪くない。
2012年の見納めには、とてもいい作品です。
Posted by kimpitt at 17:38│Comments(0)