2012年11月19日
映画「悪の教典」 うーん かなり生ぬるいよ
ミヒャエル・ハネケが、
10年以上前からやっていたようなものに、
日本映画が、ようやく手をつけるようになった・・・
という表現は、
ハネケに対して失礼になるかもしれない。
三池祟史監督作品
「悪の教典」
ある高校で、文化祭の前夜、
伊藤英明扮するイケメンの英語教師が、
教え子に銃を向けて、つぎつぎと銃殺するというドラマ。
しかし、三池監督によると、
「教師のバイオレンスがテーマではなく、
生徒たちが紡ぎだしている個々のドラマから、
人間が抱える根源的なものを感じてほしい」と。
うーん。
それにしては、
若者たちの描きかたが、
繊細さに欠けて、いまひとつ生ぬるい。
バイオレンスは、
いかにもそれらしい陰惨さをかもし出すけれど、
人間の悪の底知れぬ深さと怖さは、
バイオレンス描写の表面性にごまかされて、
浮きあがってこない。
そこへ行くと、
たとえばハネケの作品には、
画面そのものの凄さではなく、
画面の平静さの裏にひそむ悪を暗示するため、
内蔵をえぐられるような恐怖を生んでいく。
だから、
日本という狭い枠のなかで見るがきりにおいてなら、
この作品は、それなりに見る価値をもつのかもしれない。
とくに日本映画は、
その大衆性と具象性から、
悪を正面から描くことに及び腰になっているが、
権力の悪としての戦争殺人や、
追い詰められた弱者の犯す無差別殺人などを、
もっと真正面から正視する覚悟が必要だろう。
あっ、伊藤英明のこと。
彼は、育ちのよいナイスガイの顔をしていて、
もともと内面的な演技力は乏しい人ではないのか。
とはいえ、
もっと悪の滲み出るような演技をしてほしかった。
Posted by kimpitt at 20:00│Comments(0)