2012年11月06日

体内に ジャガイモの塊を入れる




 
    クラウディア・リョサ監督作品・・・
    ヘルー映画「悲しみのミルク」。
    これは、
    陰部の穴にジャガイモを入れている女の物語である。

    
    
    「彼らは身ごもったわたしを犯したあと、夫を殺し、
    夫の一物をわたしの口のなかへ押し込んできた。
    あまりの苦しさに、わたしは叫んだ。
    夫といっしょに、わたしも殺して欲しい」

    
    このような意味の歌をケチュア語で歌うのは、
    この映画の主人公ファウスタの年老いた母親。
    彼女は衰弱してベッドに横たわっており、
    やがて死を迎える。

    
    所は南米ペルー。
    1980年代に荒れ狂った極左組織の
    テロによる悲惨な苦しみと悲しみを、
    ファウスタの母親は、とぎれそうな声で歌うのだった。

    
    過酷な暴力に苦しむ母親の母乳を飲んだ子どもは、
    その苦しみと恐怖が伝染する恐乳病になるという民間伝承が、
    南米アンデスの先住民のあいだで受け継がれてきているという。

    
    故郷の村を離れ、リマ郊外のおじの家族と暮らすファウスタも、
    恐乳病のため、一人で出歩くことができず、
    ときおり鼻血を出して倒れてしまう。
    そして彼女の祖母たちがしたように、
    男性から身を守るため、
    自分の下半身の奥にじゃがいもの塊を埋め込んでいる。

    
    詩的で、牧歌的・幻想的でもある映像とはうらはらに、
    ここで語られるのは、
    現代ペルー社会が抱える矛盾と貧困。
    この作品をつくったのは、
    女性監督のクラウディア・リョサ。
    彼女は、
    ノーベル文学賞に輝くM・バルガス=リョサの姪(めい)
    だという。

    
    この衝撃的作品は、
    2009年のベルリン国際映画祭で、
    金熊賞(最高賞)と国際批評家賞をダブル受賞。
    そして同じ年のモントリオール国際映画祭でも、
    国際批評家連盟賞を受けているし、
    翌2010年には、
    アカデミー外国語映画賞にもノミネートされるなど、
    広く世界的な注目を集めた一編である。

    
    ペールの映画が日本で公開されるのもたいへん珍しいことだが、
    死期の迫った年老いた母親が口ずさむ
    素朴なメロディと悲惨な現実は、
    観客の胸に突き刺さっいくことだろう。

    
    
    



Posted by kimpitt at 20:41│Comments(0)
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