2012年06月13日
この絵だけは 見たくなかったのに
その人の名前は、「普」。
「普通」の「普」なんだけれど、
ちっとも普通なんかではなく、
むしろ、異色というか異様というか、
EXTRAORDINRYだ。
木下 普。
「きのした すすむ」と読むのだろう。
鉛筆を使った細密画の画家。
1947年、富山県生まれ。
3歳のときに、家が火事を起こし、
呉羽山麓の竹林管理小屋に移住。
その貧困のなかで、弟の三郎が餓死同然で死亡。
父母は、約10年間、家出を繰り返し、
一家は離散状態になる・・・
という凄惨な生い立ちの人。
14歳のにときに、中学の美術の教師の指導で、
絵の道に進むことになる。
この木下 普の全国巡回展が、
6月10日まで、
平塚市美術館で開かれて、
NHKの「日曜美術館」でも紹介され、
そこで、ほくは、彼のことを知った。
そして、求龍堂から出てている、
全国巡回展用の図録も入手した。
その図録の扉には、
こう書かれている。
「孤独を描きたいわけでもない。
なにかを伝えたいわけでもない。
孤独を生きる人のことを知りたい。」
彼の作品のなかで圧巻なのは、
ハンセン病の詩人・桜井哲夫さんを描いた肖像画だ。
それは、
許されるのであれば、
目わ伏せて、見ないままにしたい絵である。
不謹慎な例えになるけれど、
わかりやすく言えば、
ETやエイリアンやゾンビなどとは比較にならない
壮絶な顔。
ぼくは、いま、後悔している。
この画集を買ってしまったことを。
より適切に言うなら、
この画集を買って後悔してしまった自分の、
みじめな後ろめたさを、
ひそかに後悔している。
なぜ、ぼくは、
現実を直視しようとしないのか。
なぜ、ぼくは、
なにかを避けて生きようとしているのか。
この画集は、ぼくに、
そう問いかけてくる。
Posted by kimpitt at 16:26│Comments(0)