2012年06月09日

彼の 不器用な生き方に 共感して




    いま、ぼくの手元に、
    一枚のロシア製のDVDが、ある。

    
    日常の対人関係とか生活技術は劣っても、
    勘の鋭い人なら、それが、
    「ピロスマニ」のDVDではないかと、
    推理、まては邪推するだろう。

    
    ピンポーン!
    その推理、または邪推は、正しい。
    

    
    ゲオルギー・シェンゲラーヤ監督作品(1969年)
    「ピロスマニ」

    
    この作品の日本語字幕入りビデオとDVDは、
    かつては、日本で発売されていた。
    発売元は、「IVC」。
    しかし。
    いまでは在庫がなく、
    オークションでは、
    10000円もの値がつけられているが、
    だれも買い手は、いない。

    
    日本は、いま狂っているけれど、
    部分的には、感覚はセイジョウイシイである。
    「ピロスマニ」に1万円出すというのは、
    セイジョウでも、イシイでもない。

    
    「IVC」は、この6月に、
    例のゴダールの6枚組BLU-RAYを出したところだけれど、
    そんなものを発売するよりも、
    「ピロスマニ」を再発して欲しい。

    
    
    しかし、そんな戯言をほざいていても、
    事態が好転するこはないので、
    ぼくは、現実的に行動した。

    
    ネットで、
    「ピロスマニ」を検索。
    数カ所あたってみたら、
    AMAZON  USAに、
    プルックリンの業者が、出品していた。
    「残りは1枚」と補記してあった。

    
    売値は、「14・99ドル」
    PAL方式で、英語字幕はついていない。

    
    アメリカは、送料が18ドルもするので、
    3000円近い買い物になるけれど、
    迷いはなかった。

    
    
    再来年、
    世田谷美術館で、「ピロスマニ展」があるので、
    もしかしたら、DVDの再発売があるかもとれないけれど、
    ロシア製のDVDを持つというのも、
    ぼくに相応しい愚行のような気がして、
    ハッピー・ゴー・ラッキーな気分。

    
    
    
    以下は、さるブログに、知らない人が書いていた、
    熱烈清冽な「ピロスマニ讃歌」。
    ぜひ、読んでみてください。

    
    
     グルジアの国民的画家、ニコ・ピロスマニ(1862~1918)の生涯を
    描いた作品。グルジアを舞台にした映画と言えば、鮮やかな民族色と
    目くるめく映像美が印象的なセルゲイ・パラジャーノフ監督作品がま
    ず浮かぶけれど、この映画はまるでピロスマニその人が描いた絵のよ
    うに、静謐で清廉な作品だった。

    
     居酒屋の壁に掛ける絵や看板を描いては、その日暮らしの金を稼い
    で放浪の人生を送ったピロスマニ。一度はモスクワの画壇に注目され
    ながらも、彼の絵は世の中から冷遇されてしまう。居場所を失くした
    画家が画材だけを手に、老いてヨレヨレになってぽつんと歩き続ける
    姿には胸が詰まったが、なぜか画面に悲壮感は感じられなかった。そ
    れは、度々挿入される絵が観る者に語りかけ、絵の世界にこそ画家の
    真実があると確信することができたからだと思う。
    

     商売や結婚といった人並みの生活に落ち着くこともできず、絵の依
    頼でも不本意な注文は拒否してしまう。しかし、彼の夢は「木の家に
    住みたい」というささやかなもの、無欲で朴訥としたグルジアの農民
    の生活を描いた彼の絵そのものだ。自分の芸術に対してあまりにも純
    粋であるがゆえに、世の中と上手く折り合いをつけることができず、
    お酒を煽って憂さを晴らす姿は多くの不遇の芸術家達と重なるものだ
    が、純粋な芸術家というのはおそらく、こういう不器用な生き方を余
    儀なくされるものなのだろう。
    

     ピロスマニの絵はグルジアの自然と生活を描いたものが多いが、ど
    れも不思議な静けさが支配しているのが独特の魅力だと思う。素朴な
    生活を描いた民族色豊かな作品も素晴らしいけれど、私が惹かれるの
    は静謐な動物画。 ↓は以前画集
    で見て強い印象を受けた「きりん」の絵。
    

     映画でこの絵と再会した時、これは孤独なピロスマニ自身の自画像
    ではないかと私には感じられた。空と大地だけを背に、キャンパスい
    っぱいにすくっと一直線に立って、媚びない澄んだ視線で誇り高く、
    そして少し悲しげにじっとこちらを見据えるきりんの姿は、孤高の画
    家の姿そのままに見える。人間の世界に安住の地を見出せなかった彼
    は、私利私欲もなく、束縛されることもなく、在るがままに生きる野
    性の動物に身を置いて、キャンパスの向こう側の世界、俗世間とは別
    の次元から、世の中を、人々を、私を、じっと見つめているような気
    がする。彼の描いた動物画は、キャンパスの中にぽつんと一体が大き
    く配されているだけのものが多い。どれもシンプルだか静謐で力強い
    美しさに満ちている。野生の威厳に画家の精神の高さが表れているよ
    うで、私はどれもとても好きだ。

    
     寒色を基調とした画面も映画のトーンを静謐に統一し、1つの映像
    詩の世界を作っていた。画家の生涯を伝える物語としてはひたすら淡
    々と綴られているが、その静かな語りと映像の内にこそ、ピロスマニ
    の芸術を愛する同郷の監督の深い尊敬の念が込められている。そして
    スクリーンいっぱいに広がるグルジアの美しい自然や素朴な農民の生
    活・風俗・伝統、それらを見ているだけで、画家の中に根ざしている
    グルジアという国の心が豊かに伝わってきて素晴らしかった。
     運命の悲劇よりも、画家の清廉とした魂が胸に残る珠玉の作品。好
    きです!!!
    

    
    
   




Posted by kimpitt at 17:13│Comments(0)
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