2012年05月19日
「海燕ホテル・ブルー」の 無邪気
超?話題作「三島由紀夫と若者たち」とともに、
先行試写会がおこなわれた作品。
「海燕ホテル・ブルー」。
若松孝二監督の話によると、
「三島由紀夫と若者たち」を撮ったあと、
金と時間がすこしばかり余っていたので、
とことん遊んでみたいということで、
短期間で撮り上げた一作、とのこと。
ドラマのシュールさも、
難解さも、
そして、仕上げの雑さ加減も、
ほとんど大阪芸術大学学生の卒業制作みたいで、
その未熟さというか、青臭さが、たまらなく魅力的だ。
20代の若者なら、
必死にやっても未熟で青臭くなるが、
70代も半ばに達した男が、
こういう未熟さを曝け出せるのは、すごい。
若松孝二には、
あっけらかんとしたイノセンスがある。
原作は、船戸与一。
辺境の地で、反体制思想を生き抜く男たちを描く作家。
「海燕ホテル・ブルー」も、その例外ではない。
しかし、極端に説明的描写を省略して、
ぶっきらぼうに、
ぶっきらぼうな画面を接続しているので、
見ているうちに、
話の筋など、どうでもよくなっていく。
一番の見物は、
主役の地曳 豪のセクシーな魅力。
彼は、「実録・連合赤軍」で、
リーダー森 恒夫を演じて注目された俳優。
白くのっぺりした顔に、鋭い眼光の、
独特な面持ち。
それが、不穏な不服従精神、反抗精神、悪意など、
男の色気を剥き出しにして、
じつにキモチいい。
それと比較すると、
ドラマの崩壊的な展開の鍵になる女を演じた片山 瞳は、
スタイルは抜群とはいえ、
渋谷を漂流するヤンキーなアホ女の域を出ず、
ボーイフレンドの卒業制作に、
頼まれて無償で出演した女子大生もどき。
この作品を、三流のイモ映画に昇華させてしまったのだ?
いずれにせよ若松孝二は、
桁はずれに無邪気な、
愛すべきオジサンというべきだろう。
Posted by kimpitt at 17:31│Comments(0)