2012年01月28日
あの最中に 相手を殴る男って ほんとうにいるのだろうか
1月26日に発売された「共喰い」・・・
その日のうちに読んでしまった。
厳密に言うと、
読み終えたときは、24時をまわってはいたけれど。
非常にオーソドックス(古典的)な文章力ももっていて、
やや古風な印象もあり、
田中慎弥の力量は認めるが、
なんの予備知識もないまま読めば、
芥川賞受賞作品とは、思わないかもしれない。
それは、前回の受賞者である西村賢太についても、
言えることではあるが。
物語のつくりは、
17歳の高校生・遠馬の視点から語られていて、
それが、どう見ても17歳の男の子にしては、
とても利発で。大人丸出しなところが不自然。
そそのために逆に、嘘っぽく鳴って、
説得力が弱いのが残念だ。
ようするに、39歳の作者の目線で語られ、
17歳らしさは、ない。
性的バイオレンスが素材となっているため、
高校生・遠馬、
その恋人、
遠馬の父親と母親などの関係かどうなっていくのか、
読者をひっぱっていく力はあり、
最後の殺人のくだりは、
著者も興奮しながら書いたのではないかと思うくらい、
力が入っている。
そのせいで、この作品は、
とても三流の娯楽小説に接近してしまう。
ここを、書き出しの部分と同じように、
抑え気味でクール・簡潔に描けば、
純文学的な気品をもちえただろうに、
惜しい。
しかし、文芸評論家の斉藤美奈子も指摘しているように、
登場する女たち、
いずれも性的暴力の被害者たる女たちが、
被害者とはいえ、自立性をもち、
情けない男たちを凌駕するほどの
「生きる力としたたかさ」をもつ人間として描かれているのは、
出色だ。
これは、もしかしたら、
母子家庭で育った著者の母親への
さりげないオマージュになっているのかもしれない。
それにしても、
セック○の最中に、
女を殴って快感をえる男というのは、
ユニークな設定だ。
世間には、
こういう男が少なからずいるのだろうか。
そして男にとって、あらゆる○行為は、
ゴーカ○の要素を内在している・・・
という仮説が真実であるとするなら、
この「共喰い」は、それを肯定してはいないとはいえ、
作品のテーマのワイセ○性は、傑出している。
これは、
ひとつ間違えれば、B級のエロ小説で、
とても映画化しやすい作品である。
狙って書いたんじゃないの?(爆笑)
なお、
本の広告に大きく掲載されていた
39歳の著者の人を食ったような表情の写真。
無口でマジメで、
そこからは、はてしなくスケベであると同時に、
強靱な精神力の持ち主である草食系男子独特の、
なんとも言えないしたたかさが滲み出ていた。
受賞後の第一作が、楽しみだ。
★田中慎弥のプロフ★
4歳で父を亡くす。
人づきあいが苦手。
パソコンやケータイは嫌い。
2Bの鉛筆を使う。
会社勤務・アルバイト経験なし。
常識とか正しいことが嫌い。
中上健次・大江健三郎は、影響されそうで読まない。
Posted by kimpitt at 17:28│Comments(0)