2012年01月04日

耐えました まず 4時間 しかし残りが5時間




    王兵監督の巨大長編ドキュメンタリー、
    「鉄西区」。
    
    ようやく第一部を見終えた。
    全9時間のうちの、4時間である。
    
    
    化け物のように巨大な国営製鉄所が、
    閉鎖に追い込まれていく様子が、
    淡々と描かれている。
    
    製鉄のシステムとか、
    メカニズムについての説明はいっっさい無く、
    どう見ても旧式としか思えないプラントが、
    まるでわが身をもて余すように横たわっている。
    
    その風景の合間に、
    休憩室にたむろす男たちの、さもない会話。
    そこから、
    仕事がドンドン減っていて、
    賃金の払いも悪く、
    いつ閉鎖になってもおかしくないことが、
    わかっていく。
    
    
    やがて工場は閉鎖され、
    従業員は、
    吸い込んだ鉛の治療のために、
    療養所へ送られていく。
    
    そこで一人の男が、
    療養所内にある池で魚を獲ろうとして、
    あやまって溺死する。
    
    工場は廃墟となり、
    解体されたのち、売りに出される。
    
    
    映像そのものも、素人の実写に近い、
    素朴というか、じつに無作為的なもので、
    それに加えて、
    解説的な、
    あるいは主情的なナレーションなどがいっさいなく、
    被写体である工場と人間の殺伐とした情景が、
    そのまま、作品の印象となっていく。
    
    うーむ。
    これこそ、無作為ドキュメンタリーの真骨頂というべきか。
    
    
    その荒廃した風景は、
    いまの日本と重なっていくものをもっている。
    物理的には、東日本大震災・津波・原発の風景とも重なるが、
    空虚な反映の残滓としての都市や人間も、
    想起させずにはいない。
    
    
    さあ、このあと残り5時間。
    まだ、「鉄西区」を見る闘いは続いていくのだ。
    
    
    
    
   




Posted by kimpitt at 16:12│Comments(0)
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