2014年03月14日
童貞の道程に関する リアリズム
山下敦弘の初期の作品・・・
「リアリズムの宿」を見た。
なんで? いまごろ?
・・・という素朴な疑問に対しては、
説得力のある回答はできない。
しいて言えば、
「リアリズムの宿」という題名が、
なんともヘンテコリンで、気になっていたから・・・
かもしれない。
で、見てわかったことなのだが、
これは、
つげ義春の原作のマンガを映画化したものだった。
うん、納得。
「リアリズムの宿」というのは、
つげ義春の感覚だ。
ふとしたもののはずみで、
冬の山陰の海岸を、
あてどもなく短い旅をすることになった、
20代後半とおぼしき、冴えない青年ふたり。
ひとりは、
女と6年間の同棲経験があり、
もうひとりは、まだ、童貞である。
ひとりが、もうひとりに、
なにげなく質問する。
「○○さんは、どうして童貞なんですか」
俺は、もう6年の性的生活を経験しているのに、
年上のくせしてなんで童貞なのか?
・・・というような、
陰湿な質問ではない。
この世には、
高校生くらいで初体験をする男が多いなかで、
なんでその年齢までセックスなしで生きてこられたのか?
という、きわめて単純素朴な疑問のようだった。
で、童貞の先輩も、
「なんでって言われてもねえ・・・・・」
みたいな要領をえない返事で、
ふたりにとっては、
童貞であるかないかなど、
さほど大事なことではなかったらしい。
そりゃ、そうだ。
ひとくちに童貞と言っても、ピンキリ。
童貞ではないと言っても、
これまたピンキリなんだから。
で、肝心の作品なのだけれど、
ほとんど、
大阪芸術大学卒業記念的なテイストで、
それ以上でもなければ、それ以下でもない。
褒めモードで言えば、
「いかにも若者らしい感性で破綻なくまとめられた・・・」だし、
貶しモードで言うなら、
「もうちっと強い個性をもっていないと、この先がねえ・・・」。
事実、昨年の山下の話題作「マイ・バック・ページ」は、
そつなく出来てはいるものの、
なんか全体が優等生的で、ね。
そこへいくと、
ほぼ同じ世代かもしれない熊切和嘉は、
「鬼畜大宴会」というゲテもの色もある作品で出発し、
最新作のひとつに、「海炭市叙景」という秀作。
そういうことなんだよね。
そういうこと。
Posted by kimpitt at 20:23│Comments(0)