2014年02月05日
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」 人類の狂演
マーチン・スコセッシの最新作・・・
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は、
ニューヨークの金融市場を舞台に、
26歳で証券会社を設立し、
年収50億円近い巨額の稼ぎを手にし、
浪費と放蕩の果てに、証券詐欺で逮捕され、
36歳で業界から追放されてしまう男の半生を、
かなりのハイテンションで描いた3時間の大作。
これが、実話だというから、
絶句するしかない。
このヤバすぎる男を演じているのは、
レオナルド・ディカプリオ。
子役時代から演技派でならした彼が、
原作本が気にいって・・・
というより、この破天荒な男を演じたくて、
マーチン・スコセッシを口説いて監督に起用し、
自分がプロテュース兼主演した作品が、
この「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。
事実、随所にディカプリオの熱演が散りばめられていて、
彼は、まるで熱にうかされたかのように、
あるいは、
酔っぱらって自己制御力を失ってしまったかのように、
ド派手な名演技を見せてくれる。
そう、この映画におけるディカプリオは、
まるで、
ブレーキの壊れたポルシェか、
アクセルが元に戻らないジャガーか、
サカリのついたメス犬もどきのベンツみたいだ。
もちろんこのスーパースポーツカーは、
スコセッシというハリウッドきっての名ドライバー抜きには、
かくも華麗で魅惑的な走りをみせることは不可能である。
時代設定は、1980ー90年代だから、
まさに、あの「バブル期」。
いまにして思えば、
ウォール街を中心にした資本主義の最後の華麗な祝祭、
世界中が富と権力に目をくらませて、
狂乱の日々を淫乱していた時代。
その狂おしいまでの喧騒が、
映画の全編を染め抜いていて、
まさに目を覆うばかりの狂騒と絢爛。
マーチン・スコセッシは、
そのような人間の愚行を、
称賛するでもなく、哀れむでもなく、悲しむでもなく、
じつにクールにエネルギッシュに、
ぐいぐいと描出していく。
しいて言えば、
そこにあるのは、
監督のクールな侮蔑心というべきか。
それは、まさに精神の乱◎パーティに酷似していて、
事実、映画のなかには、
◎交パーティもどきの映像が、
たびたび挿入されてもいる。
人間とは、狂うことが好きな芋虫だ。
このように30年か50年に一度は、
人間にかならず訪れる怒濤のような狂気。
そういえばいまの日本も、
2050年代あたりになると、
覚めた目で、
「あのころ、みんな狂っていたよね」
と、つぶやくことになるのかもしれない。
Posted by kimpitt at 21:08│Comments(0)