2014年02月01日
なんと強引な 執念の具象化 「ハンナ・アーレント」
ハイデガーは、
数いる哲学者のなかで、好きなほうだといえる。
しかしねえ・・・・・これを、
「ハイデッガー」と書かれてしまうと、
それはもはや、
哲学者なんぞではなく、
消臭剤かなにかと勘違いしてしまうだろう。
いや、ひそかに密輸入されている★淫剤のたぐいに、
ふさわしい名前かもしれない。
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督作品、
「ハンナ・アーレント」の字幕には、
ハイデガーが、「ハイデッガー」として、
登場する。
なぜなら、
ハンナ・アーレントは、
ハイデガーの弟子だからだ。
それにしても、
ハンナ・アーレントの話を映画化するとは、
大胆不敵このうえない。
しかも、
ハンナの色恋沙汰その他下世話な素材はいっさいなく、
ナチのアイヒマン裁判を傍聴する話である。
ドラマの核となるシーンは、
もちろん、
エルサレムの法廷に喚問されるアイヒマンの証言だ。
このシーンには、
イスラエル放送が、放送用に撮影した実写が、
使われている。
つまり、ここだけは、
完全な実写、ドキュメンタリーなのだ。
このシーンを知るだけでも、
この作品には、見る価値がある。
その実写シーンで、
アイヒマンは語る。
「私は、上からの命令を、ただ忠実に実行しただけです」
ようするに、アイヒマンは、
「凶悪な反ユダヤ主義の怪物」なんかではなく、
ごく平凡な「収容所の責任者」にすぎなかった・・・
ということになる。
そこから、ハンナ・アーレントは、
有名な「悪の凡庸」を唱え、
世間から激しい非難を浴びたのであった。
彼女の辞書には、
「連帯責任」という熟語は存在しなかったのである。
このマルガレーテ・フォン・トロッタの無謀ともいえる力作は、
その歴史的事実の重さと、
監督の執念が高く評価されたのか、
2013年の「キネマ旬報ベストテン」で、
2位だか3位にランクされている。
それにしても、ハンナ・アーレントは、
映画のなかで、よくタバコを吸っていた。
ラストシーンでも彼女は、
椅子に横たわって、タバコを吸っている。
その横に裸体の男がいたとしても、
彼女は、彼のペ★スではなく、
タバコを吸っていたに違いない。
そのタバコが、
ケントか、ラークか、フィリップ・モーリスかは、
不明である。
「ハンナ・アーレント」は、
人類の悲劇を無理やり映像化したという意味で、
歴史にのこすべき映画といえる。
そして、監督の執念の強引な具象化という点でも、
歴史に残したい作品だ。
Posted by kimpitt at 20:23│Comments(0)