2013年07月22日

静岡ロケ作品  ドキュメンタリー 「ちいさな、あかり」


 
    この映画「ちいさな、あかり」は、
    静岡市JR駅前から、「横沢行き」のバスに乗って、約1時間、
    「大沢入り口」で下車し、
    そこから徒歩約5分の山の中にある、
    小さな小さな集落でロケしたドキュメンタリーである。
    

    もともとバスは、
    山を越えて井川まで行っていたのだが、
    2年前の豪雨の土砂崩れで道路ががいまだに不通のため、
    峠の手前の「横沢」で折り返し運転となっている。

    
    
    そこには、23世帯が住んでいて、
    そのうちの大半は、「内野」という姓である。
    もちろんそのなかには親戚も存在するけれど、
    全世帯が親戚ではないらしい。

    
    もの好きにもぼくは、
    この72分のドキュメンタリーを見るまえに、
    大沢部落を訪問した。

    
    ここ大沢では、2013年の6月から、月2回日曜日に、
    「縁側カフェ」とう催しをやっているというので、
    百聞は一見に如かず・・・カメラの目ではなく、
    自分の肉眼で、この大沢部落を見たかったのである。

    
    「縁側カフェ」というのは、
    特別な場所で、特別なことをするわけではなく、
    それぞれの民家(大半は農家)が、
    ひとり300円のお茶代をもらい、
    その家で作ったもの、
    たとえば、柏餅なり、手づくりの饅頭なり、
    なにかお茶菓子を提供する、というもの。

    
    ぼくたちが寄った家では、
    芋の蒸しパンと、漬物を出してくれ、
    お土産として、柏餅をくれた。
    (これで300円では、完全に赤字だろう・笑い)
    

    その家のオバサンと、話に花が咲いた。
    というのは、彼女は、川根本町千頭の出身で、
    千頭には、ぼくの遠い親戚の人がいたからだ。
  
  
    オバサンは、
    中学を卒業すると、
    なにも説明などうけないまま、
    親に連れられて、大沢の内野家へ嫁に来て、
    子どもを産まされ、二人の子の母親になったが、
    姑からあれこれ悪口を言いふらされ、
    二人の子の手をひいて泣きながら山を越え、
    川根の実家に帰っていった・・・・・
    といった身の上話を、
    初対面のぼくに、
    オバサンは笑いながら話してくれるのだった。

    
    
    さて、と。
    大沢地区訪問の話はこのくらいにして、
    映画「ちいさな、あかり」

    
    これは、自然体の、初々しく素朴な映像詩で、
    上映時間72分だから、
    いわば長めの短篇といっていい。

    
    なぜ映像詩なのかというと、
    大沢地区を全国に紹介しようという観光目的があるわけではなく、
    この地区の場所とか訪問ルートとかは、
    ほとんど紹介していない。

    
    昭和時代をそのままひきずっているかのように、
    きわめて素朴な自然の風景の四季折々を、
    鮮やかに描いているわけでもない。

    
    また、人間は、
    高齢者と子どもが断片的に登場するのみで、
    どんな人たちが、そこで、
    なにをして暮らしているかは、よくはわからない。
    

    特定の問題意識をもって、
    山村の人と自然を意思的に映像化し、
    なにかを主張しているわけでもない。

    
    しかし、
    チラシに書かれていたキャッチ、
    「毎日に、そっとふれる」
    が示すように、
    やさしい時の流れが、
    のびやかな暮らしの営みが、
    ほんとうに純粋なまま、
    観客のところへ忍び寄ってくるのだ。

    
    
    わずか67分のドキュメンタリー作品。
    まったくけれん味のない、
    とても素朴な映像詩。
    その、じつに控えめな叙情性が、
    あなたを、やさしく抱きしめるのである。
    

    そして、もし、この「ちいさな、あかり」が、
    実用的な説明にあふれたドキュメンタリーになっていたら、
    観光協会好みの凡作に堕していたに違いない。
    

    
    
   



Posted by kimpitt at 17:48│Comments(0)
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